悪魔の書簡
武須 薫(ぶす かおる)(36)・・・フリーター。声はいい。
菅谷美穂(すがやみほ)・・・アイドル。昔はバカだった。
マネ・・・マネージャー。名前は松浦。女でも、男でも特に問題ない
○薫、スマホで美穂の動画を観てる。
アナウンサー「では菅谷さん、最後にアイドルを続ける秘訣は何ですか?」
美穂「そうですね・・・・自分の短所をしっかりわきまえて、決して奢らないことですかね!」
アナウンサー「以上、特集! 今大人気のアイドル・菅谷美穂さん特集でした~」
○起きてCDを見る。
薫(モノ)「菅谷美穂。俺の好きなアイドルだ。小さい頃はバカだったけど、必死で勉強して頭良くなったらしい。そういう、努力家な所とかが、好きだ」
○「幸せは自分でつかみ取る」というタイトルのCDを見る。
薫「自分でつかみ取る…」
○用具入れのドアが開く。清掃服を着た薫が用具をとり出す。
○テレビ局。掃除している薫。
モブ「美穂ー!」
○ぎょっとしてそっちに視線を泳がす薫。
モブ「次の撮影1時からだって!」
美穂「ほんと? じゃ、お昼食べ行こ」
○ぱたぱたと走っていく二人。携帯を落とした。
薫「あ......!」
○携帯を拾う薫。
○薫の家。携帯を持って帰って来てしまう。
薫「どうしよう…とうとう持って帰って来てしまった…クビかな…GPSで場所を探られたら…」
悪魔「困っているようだねェ」
薫「えっだっ誰…!?」
○黒い翼の悪魔が現れる。
薫「な…あ、悪魔…?」
悪魔「お前が思う通りに俺は見えるはずさ。そう、俺は悪魔。人の悲しみが何より大好きな堕落の申し子さ」
薫「あの…何か…?」
悪魔「ズバリ言おう。お前はその携帯に掛かってくるはずの彼女に、直接会って携帯を返そうとしているな?」
薫「うぐっな、なぜそれを・・・さ、さすが悪魔・・・!」
悪魔「(いや悪魔じゃなくても分かるけど)だが、そこでネックとなるのが貴様の『顔』だ・・・・おお、見ろ、誰がこんな醜い顔に産んだのだ? 貴様がいったい何をしたと言うのだ? 見るも悍ましい、とび出た口、ただれた目・・・」
薫「や、やめろ!! うううう………」
悪魔「…だが、そんな貴様に今日は素晴らしいプレゼントをやろう。聞いたことがあるかね? "ブービーリテラ"というものを……」
薫「ぶ、ぶーびー…りてら…」
悪魔「くっはははは!!! 今の顔!!! いつにも増して最高に醜かったぞ!! そんな顔では、憧れの美穂ちゃんにも気味悪がられるに違いない。」
薫「ううう……」
悪魔「そんなお前にこれをやる。」
○悪魔が天を指さすと、ペラッとどこからか紙が一枚舞い降りてくる。それを受け取る薫。
薫「こ、これか・・・ブービー・リテラ・・・?」
悪魔「ククク…話か早いな…おい人間、その紙を顔に貼ってみろ。そうするとたちまち、どんな女も魅了する『魅惑の姿』になれるぞ。」
薫「ほ、本当に…!?」
悪魔「変身している間は、紙を貼り続けろ。それで他人には、イケメンに見えてるぜ」
薫「そ、そんなの、信じられない。まるで裸の王様みたいだ」
○甲高い声で笑う悪魔。びっくりする薫。
薫「それに、あなたがこんなことをして、僕から何を奪うんです? た、魂ですか?」
悪魔「オレが欲しいのは…『時間』さ」
○顔を近づける悪魔。
薫「…じ、じかん…?」
悪魔「貴様が容貌に神経を費やしたその「不毛」な時間そのものが、オレのゴチソウなのさ。神が聞いたら、さぞ嘆くだろうなァ?」
薫「そ、そういうものなのか…? 神だって容姿のいい人のほうが好きに決まってるさ」
悪魔「うるせェな、お前が思う通りに俺は見えると言ったろう。お前が俺を悪魔だと思うなら、そうなのさ。さーて、そろそろ電話が掛かってくるだろう。オレは帰るぜ」
薫「あっちょっ…」
悪魔「あーばよ! せいぜい無駄な人生楽しみな!」
○飛び立つ悪魔。それを見送る薫。
薫「・・・・・。」
○携帯鳴る
薫「うおわっ(咳払い)は、はい」
マネ「もしもし。私BAエージェンシーの松浦と申しますが、管理室の方ですか?」
薫「いえ」
マネ「では警察ですか?」
薫「いえ、あの、携帯を拾った者です」
マネ「そうですか。取りに伺いますので今どこにいらっしゃるか教えていただいても構わないでしょうか?」
薫(やばい、自宅まで持ち帰ったとバレたらすごい怒られる・・・)
薫「あ、あの、事務所まで届けますよ。」
マネ「まぁそれは助かります。では今から住所を申し上げますので・・・」
○事務所のインターホン鳴らす。ブービー・リテラを付けている薫。
○過去回想
薫(美穂さんに会うわけじゃないからいらないんだけど・・・だけど特別副作用もないんだったら・・・つけるしかないじゃないか? これで・・・・これで全ての苦しみから解放されるのなら・・・・・)
○おそるおそる町を歩く薫
薫(どうしよう・・・・道行く人にジロジロ見られるけど・・・顔に紙を貼ってるおかしい奴だと思われてるのか、イケメンだから見られてるのかよく分からない・・・・・)
服屋「へいそこのイケてるお兄ちゃん! 服と顔が全然合ってないよ! ここで揃えて行かない?」
薫「へっ、お、おれ?」
女性「あ、あの~」
薫「はっはい」
女性「よかったらお茶でもしませんか~?」
薫(見られている・・・・? イケメンに・・・・・見られてる・・・・・!? 悪魔の力・・・・ホンモノだったのか・・・・!! いやそれとも・・・・全員を巻き込んだドッキリかも・・・・まだ『裸の王様』の疑いは晴れたワケじゃないぞ・・・・)
○回想終わり。マネージャー出てくる。
薫「あの~スマホを拾った者ですけど」
マネ「ああ、ありがとう。ここじゃ何だから、入っていただける? お礼もしたいので」
薫「失礼します・・・」
○テーブルに座らされる薫。辺りにはポスターとか貼ってあり、所属タレントの曲とか流れてる。
マネ「えっと・・・・芸能人の方でしたかしら? 存じ上げないけど」
薫「へっ!? あ、いえ、えっと、僕は清掃員で・・・・」
マネ「清掃員・・・・? なぜ芸能界にお入りにならないの?」
薫「なぜと言われましても・・・」
マネ「ねぇ、良かったら、うちの事務所に入らない? あなたほどの顔なら、仕事には絶対困らないわよ」
薫「・・・・・!」
薫(顔がいいだけで仕事が来るなんて・・・・・世の中狂ってる・・・・)
薫「は、ハイ、よろしくお願いします!」
今日から同僚になる薫君
ここで1話が終わり
みてると なんとなく 安らぐ
生き別れの兄弟とか?
あんた悪魔じゃないだろ?
悪魔にひと言言いたいんだけど
偽りは不毛だって言ったけど・・・・
努力は不毛なんかじゃなかったよ
今回はそういう事にしてあげます
これ、ボイスドラマがいいね
てかこの話結局不毛じゃないし
ドッキリでもないんだよな
幸せは自分でつかみ取る
これAIENに混ぜるので没